龍と虎に愛されて。
龍心がこういう顔をした時は、何かよからぬことを考えている前触れで。
このまま話をごまかすこともできないだろう。
観念した俺は、龍心と明菜ちゃんに昨日の出来事を話した。
「なにそれ!!優華ちゃんが可哀想だよ!!」
話を聞き終える前に、明菜ちゃんは顔を真っ赤にして怒りをあらわにする。
黙って話を聞いていた龍心の拳も固く握られていた。
「つーか、お前、よく手出さないで我慢したな」
「まぁね。あんな奴でも、優華ちゃんの彼氏に違いないから」
「へぇ……。昔のお前なら後先考えずに手出してただろ?」
確かに、昔は手当たり次第だったかもしれない。
喧嘩を売られれば、必ず買った。
喧嘩をしている間は、嫌なことを全て忘れられたから。
でも、それを龍心に言われる筋合いはない。