龍と虎に愛されて。
今朝の佐和と荒木瑞穂の会話に、なぜか俺は無性にイラついた。
『明菜のお気に入りの早坂先輩、今彼女いないみたいだよ?』
荒木の言葉に目をキラキラと輝かせて嬉しそうな佐和。
それどころか、
『頑張ってみようかな』
なんて言い出す始末。
あいつが一体、早坂の何を知っていて頑張ろうと言い出したのかよく分からなくて。
佐和は知っているんだろうか。
早坂が昔から女をとっかえひっかえしていることを。
嫌いな早坂の話を楽しそうにしている佐和にムカついたのか、それとも佐和が朝からギャーギャー煩いからか。
胸の中のモヤモヤの理由をいくら考えてみても、答えは出ない。
あの時も、生物室に佐和を呼び出して文句を言ったら、すぐに教室に戻るつもりだった。
それなのに、俺は佐和に……――。
頭で思うよりも先に、俺は佐和の唇を塞いでいた。
「……――では、小林君。問3の答えをお願いします」
ボーっとそんなことを考えていると、突然自分の名前を呼ばれて我に返った。