龍と虎に愛されて。
「なに驚いてんだよ。お前が敬語やめろって言ったんだろ?」
「え……小林?」
そりゃ敬語やめればって言ったのはあたしだけど……!!
小林のあまりの豹変ぶりに目の下を引きつらせる。
小林って、真面目なガリ勉で暗くて友達もいなくて、お友達は本だけだったはずだよね?
じゃあ、目の前で意地悪そうにニヤニヤと笑ってる男はいったい誰なの?
あ、ありえない!!
「……冗談ですよ」
目を白黒させるあたしを横目に、小林は日誌をパタンと閉じ立ちて上がる。
「これ、担任のところに持っていきます。佐和さんは先に帰ってて下さい」
「あっ……うん。ありがとう」
「じゃあ、また」
小林はそう言うと何事もなかったかのように、あたしを残したまま一人で教室から出ていった。