龍と虎に愛されて。


早坂の話をしている佐和にムカついたのも、ふいに佐和にキスしてしまったのも……。


俺の心の中に、佐和という存在があったからなんだ。


『嫌よ嫌よも好きのうち』


シンジのその言葉はあながち間違っていない。


俺はバカで強がってるくせに弱虫な佐和を……


いつの間にか好きになっていたのかもしれない。



あいつの家庭教師をしてくれと、親に頼まれたとき、めんどくさいと思いながらも引き受けることにした。


あいつが、俺に話しかけてくる唯一の女だったから。


俺の容姿を見て避ける女はたくさんいた。


でも、あいつは何の隔(へだ)たりもなく俺に話しかけてきた。


俺が素っ気無く返事をしても、あいつは懲りずに何度も笑顔で声を掛けてくる。


日直の仕事も、他の女は俺に全てを任せてさっさと帰ってしまう。
 

でも、佐和はブツブツと文句を言いながらも教室に残っていた。


一緒に日直をやってくれのは、佐和が初めてで。


俺は、佐和に……


自分でも気付かぬうちに惹かれていたのかもしれない。













< 78 / 478 >

この作品をシェア

pagetop