龍と虎に愛されて。
早坂の話をしている佐和にムカついたのも、ふいに佐和にキスしてしまったのも……。
俺の心の中に、佐和という存在があったからなんだ。
『嫌よ嫌よも好きのうち』
シンジのその言葉はあながち間違っていない。
俺はバカで強がってるくせに弱虫な佐和を……
いつの間にか好きになっていたのかもしれない。
あいつの家庭教師をしてくれと、親に頼まれたとき、めんどくさいと思いながらも引き受けることにした。
あいつが、俺に話しかけてくる唯一の女だったから。
俺の容姿を見て避ける女はたくさんいた。
でも、あいつは何の隔(へだ)たりもなく俺に話しかけてきた。
俺が素っ気無く返事をしても、あいつは懲りずに何度も笑顔で声を掛けてくる。
日直の仕事も、他の女は俺に全てを任せてさっさと帰ってしまう。
でも、佐和はブツブツと文句を言いながらも教室に残っていた。
一緒に日直をやってくれのは、佐和が初めてで。
俺は、佐和に……
自分でも気付かぬうちに惹かれていたのかもしれない。