折れない心
自転車を走らせていると誰かの声が聞こえた。




「あっ風岡先輩だ!」


「那抖さん!」




一つの集団を通り過ぎる時に一瞬、高槻の顔が見えた。





「那抖?
 あの人達知り合いなの?」




「しらねっ」




振り返って見てみると、全員がこちらのほうを見ていた。




「こっわ!」

茶髪に、目の回りが真っ黒で、赤いリップを塗りたくった、どれも同じような顔をした女達が全員こちらを睨んでいた。





まぁ、歳も近いし知っててもおかしくないかぁ。




この時、あたしは事を軽く考えていた。




「あっ紗茅ぃ〜!
 神社寄ってくか!」




「あっうん!行く!」




自転車は突然交差点を曲がり、近くの神社へ向かった。




自転車を神社の境内の手前に起き歩きながらくぐりぬけた。




「小銭ある?」




「おー!しくった!ねーや!」




「あたし、50円玉しかないや」




「んじゃあ、二人で50円な!」




「え?けちくない?」




「気は心だ!」




「意味わかんないし」



50円を持ったあたしの右手を那抖は一緒に握り、「そーれっ!」と投げた。




――カランカラン♪




「ねぇ、これって
 どのぐらい鳴らすの?」




「いっぱい鳴らした方が、
  御利益あるんじゃね?」
と言いながら那抖はカランカランと振り回し、神社の鈴を鳴らした。




あたし達は二人並んで目を閉じ、手を合わせ拝んだ。
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