折れない心
「ねぇ、
 今からうちでケーキ食べる?」


「そうしよっか♪
 やっぱクリスマスは
 二人きりがいいよな♪」



街にはジングルベルの歌が流れ、誰もがケーキの入った箱を持ち、帰り道を幸せそうに歩いていた。



あたし達は近くの美味しいと有名なケーキ屋さんに入った。


「わぁ、こんな時間でも
 お客さん多いんだねぇ」


「予約しときゃよかったな」


「那抖んちは今日食べないの?」



「うちはいっつも小さいケーキ。
 父ちゃん食わねぇしなぁ。
 だからばっちゃんと小さいの買
 って二人で食べてた・・・」


ケーキのショーケースを、前のお客さんの間から見ながらそう答える那抖が、ちょっと淋しそうに見えた。



「じゃあ、
 まぁるいケーキ買おうよ♪」



「ほんとか?
   まーるいのっ♪
     まーるいのっ♪」


那抖が体を揺らして喜んだ。


10分ぐらいしてようやく順番が来た。



「このケーキ下さーい♪」

あたしは【7号】と書いたイチゴの乗った生クリームケーキを指差した。


「紗茅?
 ちょっとおっきすぎねー?」


「いーんだよ♪」


「ありがとうございました〜♪」



那抖はケーキの箱を持ってはしゃいでいた。



「ちょっとー!
  あんまり揺らさないでよ?
 崩れるからちゃんと
 まぁーっすぐ持ってて!」



「わかってるってぇ♪」



「まったく・・・」



那抖が交差点で曲がろうとした。



「あ、那抖こっち!」



「ん?どこ行くんだ?」



「やっぱ那抖んちで食べよ?」



「なんで?」



「おばあちゃん
 一人でかわいそうじゃん?」



「紗茅ぃ!」



「やだぁ、
 マジ泣きしないでよ?」



「ほっんと
 おまえっていい奴だな。
 俺も少し気にはなってた・・・」



「そう言えばいいのに」



「ばっちゃん喜ぶだろうなぁ♪」



あたし達は、おばあちゃんの喜ぶ顔を楽しみにして那抖の家に向かった。
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