折れない心
ようやくケーキを切り分け、食べる頃には少し生クリームが溶けていた。



「うっめぇー!」



「よかったね。那抖♪」



「まぁ、ほんとにうれしいねぇ、
       おじいさん」



おばあちゃんは、仏壇にケーキを置いて拝んだ。



「ばっちゃん!見てくれよ。
 これ紗茅にもらった♪」


那抖は、まだしていた右手の手袋をパーをして見せた。


「おやまぁ、そりゃあ
 ほんとによかったねぇ」



「いただきます」
と、おばあちゃんは手を合わせてケーキを一口食べた。



「おばあちゃんにも
 手袋編んであげる♪
 おばあちゃんは何色が好き?」



「あら、あたしも赤が好きなんだ
 よ。歳をとると明るい色を好む
 って言うねぇ」



苺を摘んで食べ、酸っぱそうに顔をクシャクシャにした。



「じゃあ那抖とお揃いの赤ね♪
 あ〜もうこの際みんな
   お揃いにしちゃおっか♪」



「ふふっ。毛糸代浮くしな」


那抖が意地悪く笑った。



「も〜いい!手袋返して!」



那抖の腕をひっぱって手袋を取ろうとしたけど、必死に手を組んで放さない。



「やだぁ!やだぁ!
 ばぁちゃん紗茅が虐めるぅ!」


「あっ!おばあちゃん
 味方にするとか卑怯よ!
 ふっ、まぁいい・・・
   左手の手袋質は
       預かっている」



あたしは悪そうな顔をして、ポッケから左手の手袋を出しニヤッとした。



「あっ!俺のぉっ!返せー!!」



「いーやっ♪」



「おや、おや仲がいいねぇ。私も
 若い頃はおじいさんと・・・」




二人はバタバタとこたつの回りを走り回って、おばあちゃんはおじいちゃんとの恋愛話しを延々と語り続けた。
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