折れない心
あたしはそれからおばあちゃんにおやすみなさいをして、那抖に自転車で家まで送ってもらった。




風は冷たくて耳がちぎれそうだったけど、心はぽかぽかとして暖かかった。




誰にも気にせず、那抖に後ろからしっかり抱き着いていられるのがうれしかった。




家に着くまでの距離が一番短く感じられた日だった。



――キキッー・・・


「とうちゃーく♪」




家の前に自転車は停まり、あたしは後ろから降りた。



「紗茅、
 今日はほんとありがとな」




「ううん、こちらこそ♪
 めっちゃ楽しかったよ♪」




「紗茅・・・」



「あっ」

那抖は自転車に乗ったまま、あたしを抱き寄せいきなりキスをした。




「じゃーなっ♪」

あたしの頭をぽんっとして、自転車ですぐに帰って行った。




「ずるーい。不意打ちだぁ」




あたしは呆然と立ったまま、手を振る那抖の後ろ姿を見送った。
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