折れない心
そこには那抖と名雪に宛てたメールが保存されていた。


━━━━━━━━━━━━━━━
那抖へ。

ごめんね。

あたしを許して下さい。

あなたを愛してました。

━━━━━━━━━━━━━━━

名雪へ

名雪。あたし強くなかった。

名雪の気持ちとかがやっとわかった。

悲しい気持ち、淋しい気持ち、空虚な気持ち。

あなたは生きて下さい。パパもママもいるから生きて下さい。

━━━━━━━━━━━━━━━

ありがと。

二人とも心配してくれて。
さよなら。




フェンスをよじ登り、ほんの15センチほどしかない所へ足を下ろした。




フェンスを背にまっすぐと立ち深呼吸した。




目を閉じママの顔を思い浮かべた。




雨が次第に激しくなってきた。




小刻みに体が震えだす。




雨と共に涙が頬を伝う。




『怖いの?紗茅。』




自分に問いただす。




フェンスを持ったまま、少しだけ足を前にずらした。



「紗茅ー!」




下から誰かが叫んだ。




「紗茅ー!何やってんだよ!」




那抖の声だ。




どうしてここが・・・?




怖くて、怖くてフェンスから手が離せない。




この手を離せば楽になれるのに。




――バタンッ!




「さっちゃーん!」



後ろを振り向いた瞬間、濡れた地面のせいで足が滑った。

「う・・・っあ・・・」



「イヤ――――――――――!
 さっちゃ―――――――ん!」
< 177 / 299 >

この作品をシェア

pagetop