折れない心
フワリと体が宙に浮いた。



冷たい雨が顔にかかりヒンヤリとした。




暗い空がどんどん遠退いた。




もう死ぬんだと思った。




名雪を最後に見れてよかったと思った。




でもなぜかあたしが最後に見たのは、那抖だった気がした。




――バキッ!




     ――ドサッ!










    ――イタイ――









黒い黒い穴の中へ吸い込まれていった。





まるで大きな掃除機で吸い込まれてるような感じだった。





目を開くのが恐かった。





おそるおそる目を開くと、目の前にはどこまでも続く階段があった。





後ろを振り返っても長く下へ続く階段だった。





上るしかない、そう思ったあたしは長い長い階段を上った。





そのうち小さな光が見えた。





上って行くうちに光が大きくなって行く。





誰かの、がんばれって声が聞こえた。





もう少し・・・





もう少し・・・




あたしは、眩しすぎる光の中へ目を閉じたまま飛び込んだ。
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