折れない心
しばらくして、少し開いたドアからもれる、廊下のヒソヒソ声で目が覚めた。


「・・・お兄ちゃん、
 那抖君の容態は?」



「あぁ、ちょっとまだ
 油断はできない状態だな。」



「さっちゃんには
 ・・・知らせない方が?」



「そうだな。落ち着くまで
 知らせない方がいいだろう。
 那抖君は凄いな・・・
     俺ならできない・・・」



「那抖君も、さっちゃんも
 いつ目覚めるんだろう・・・」



何?どういうこと・・・?


あたしは体につけられていた点滴を外し、フラフラと廊下に飛び出した。



「さっちゃん!」



「名雪、どういうこと?
 那抖は?那抖はどこ?」


名雪の肩をつかみ揺らした。




「さっちゃん落ち着いて!」




「那抖はどこなのよ!教えて!」




名雪達に引き止められるのを振り払い、何度もこけながら那抖をさがした。


頭がクラクラする。


那抖どこなの!


病室を一つずつ名前を探して回った。




【風岡那抖】




――ピッピッピッ



機械音が響く、その病室に那抖が横たわっていた。




「どうして?どうして那抖が?」




「那抖君は、
 さっちゃんが落ちた時に、
 受け止めようと
   したのかもしれない・・・」




「あたしを?」




「直撃してたら二人とも駄目だっ
 たらしいけど、木でバウンドし
 た所に那抖君がいたみたいだか
 ら。でも打ち所が悪くて・・・」




「那抖が・・・
 あたしの為に?
  こんな姿に・・・」
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