折れない心
島崎の授業は、誰が寝てようが、誰かが手紙を書いてようがおかまいなしに授業が進んでいった。




そのうち、みんなが島崎を好きになり、授業を聞くようになった。




「はい、みなしゃん、
 15ページを開いて下しゃい」




「はい、吉岡しゃん。答えて」




「えー!わかりませーん!」




スタスタと歩いて、あたしの真横にペッタリとくっつきジッと見つめた。




「もー・・・メッ!」




「ぎゃははははは!」

一斉にクラス全員が笑った。




いつの間にか、島崎の化学が1番成績もよくなっていた。




「ねぇ、さっちゃん、担任が島崎
 でよかったね。少し心配だった
 けど、なんか気が楽だよね」

恭子がそう言って笑った。



確かに気が楽だった。




ガミガミと怒る訳でもなく、できない生徒を叱る訳でもなく、あんな喋り方でも授業もよくわかるし、飽きさせない。




「うん、アイツからかって
 るの最近生き甲斐かも」




あたしは太陽の光線を鏡に反射させて、島崎の後ろ頭を光らせた。




「誰でしゅかっ!」




サッと鏡を隠す。




みんながクスクスと笑い、先生もニヤッとあたしを見る。



でも、まったく叱らない。


なんだか今までに出会ったことのない、不思議な先生だった。
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