折れない心
――ガラガラガラ・・・




「ただいまー!
 雅人帰ったぞー!」




「え!」「え?」

あたし達は、抱き合ったまま顔を見合わせた。




「嘘だろ?!」

雅人はあたしと離れて、急いで一階に下りて行った。




「父ちゃん!
 今日帰らねーって!」




「ひっかかりやがったな!
 バカめ!おまえは、まーた
 女を連れ込みやがって!」



――バシッ!


本のような物で叩かれる音がした。




「いてっ!ちっげーよ!」



あたしはカバンを持ち、急いで一階へ下りた。




「お邪魔しました!
 あの、もう帰りますから・・・」




雅人の父親が、あたしを見てびっくりした顔をしていた。



「ん?親父どうしたんだ?」

雅人がお父さんの顔を覗き込んだ。




「いや、なんだ、
 あー、まぁ、もう少し
 ゆっくりしていきなさい」

そう言いながら、中に入っていった。




「お父さん、どうしたの?」




「わかんね。もう少しいるか?」




「ううん、帰るー」




あたしはローファーを履きながら、
「お邪魔しましたー!」
と、おじさんに聞こえるように大きな声で言った。
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