折れない心
「すいまっ・・・紗茅っ!」




「アニキ・・・」




ぶつかって振り向いたアニキから涙がぽろりとこぼれおちた。




「俺っ・・・カッコわる・・・」



あたしを避けるように走って行った。




「アニキ!待ってよ!」




アニキは、小さな待合室のソファーになだれ込むように顔を埋めた。




「アニキ・・・カッコ悪くなんかな
 いからいいんだよ?
 いっぱい泣いていいんだよ?」




「紗茅、俺っ・・・俺っ・・・」



あたしは、アニキのうずくまったソファーにゆっくり腰掛けた。




「あたしの膝貸してあげる。
     今日は特別だよ」




あたしはそれ以上何も言えずただ、頭を撫でてあげることしかできなかった。




あたしの制服のスカートが大きなシミになるくらいアニキは泣いた。




本当は泣き虫だったんだね。




あたしよりいっぱい、いっぱい。




愛されないことより辛いものはない。




ママごめん。




今日は許して・・・




ママならきっとわかってくれるよね。




人が困ったら手を差し延べてあげなさいっていつも言ってるもんね。




そのまま泣き疲れたのか、アニキは子供のように眠った。
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