折れない心
「ねぇ!まだぁ?
 もう行くよ〜!」




男子トイレの壁に背をもたれて待ってたあたしは、痺れをきらした。




「お〜!今行く!」




少し水で濡らした髪の毛をまだ気にしながら、アニキが追いかけてきた。




「なんかドキドキすんなぁっ!」




「なんでよ?」




「いや、その・・・」




アニキは後ろ頭をポリポリかきながら、はにかんだ。



ママの病室の前に着くと、ドアをゆっくりと開けた。



―――カラカラカラ・・・




「ママー?」




ベッドの中を覗くと、ママは気持ち良さそうに眠っていた。




「あ〜寝てるみたい」




「紗茅、ごめんな」




「いいって、いいって。アニキの
 弱み握れたしねぇっ♪」



「ヘヘ、みんなには内緒にしとい
 てねっ♪」

舌を出してウインクをする。




「そんなぶりっ子しても
     だぁーめっ!」




「う・・・ん・・・紗茅?」




ママが目を覚ました。




「あっママ起こしちゃった。
      ・・・ごめんね?」




「いいのよぉ、ずっと待ってたん
 だから。あらぁ?こちらは?」




「あっ、風岡那抖っ言います」




アニキは、跳ねた髪の毛を撫でながら、ペコリと頭を下げた。
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