折れない心
――♪〜♪〜
自動ドアが開き、軽い足どりで那抖が入ってきた。




「いらっしゃいませ」




「おー紗茅!」
那抖が手をあげても、気付かない振りをして背中を向けた。




「がんばってるか?」
レジ台にドンッとお茶を置いた。




――ピッ!


「150円なります」




「ん?どーした?」

那抖は辺りをきょろきょろと見回した。




「ありがとうございました」




そう言ってお茶とお釣りを50円渡した。




「おっおぉ・・・」

那抖は首を傾げながら、きょとんとした顔をして出て行った。




『彼女』がいるのに話しかけないでよ。

「女ったらし・・・」


そう呟いてレジにいたくないあたしは、先輩に『唐揚げを揚げるから』と言ってもくもくと唐揚げを揚げていた。




どうして男って何人でも付き合ったりできるんだろ。



だいたいどっちの女に対しても失礼だよね。




相手の気持ちとか考えたことあるの?




「吉岡?」

表から覗いた先輩が声をかけられた。




「はい?」




「唐揚げ、揚げすぎじゃない?」




気付いたら唐揚げの山盛りができていた。




「ぎょえ〜!どーしよー!」




「どうかしたの?今日の吉岡
    なんかおかしいわよ?」



「すみませ〜ん・・・・・・
 かなりへこんでます・・・・・・」



「どうして?」



「プチ恋して
 一日で失恋みたいな・・・」



「アハハ、そうなんだ!」



「もうっ!
 笑い事じゃありませんー!」




「一日でそれだけへこむなんて
 かなりの重症だねぇ・・・・・・」




やる気のないあたしを見兼ねて、先輩は山盛りの唐揚げをてきぱきと袋に詰めていった。




「はぁぁ・・・・・・
 男ってわかんないですね・・・」




その後も、トンクを片手に持ったまま溜め息しか出なかった。
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