折れない心
日曜日の病院は賑やかだ。



点滴を打ったまま歩く人、松葉杖をつく人、様々な人々が行き交う。




お見舞いに来る人も多く、笑顔でいるパジャマ姿の人が多い。




売店を通りかかり、ふと中を見ると、どこか見覚えのあるパジャマを着た男性がいた。




「・・・あっ!」




「ん・・・?」




「あっあのっ。あたし、
 那抖君の友達の紗茅です」




「へぇ〜、那抖にこんな
 可愛い友達がいたのかぁ」
そう言って那抖のパパはにっこり笑った。



あっ・・・
この笑顔って那抖とそっくりだ。




「どーしてここに?」




「あっ、ママが入院してて・・・」




「そーかい!そりゃあ
 べっぴんさんだろうなぁ♪」




なんだか、言うことも笑顔も那抖とそっくり・・・




「それじゃあ、えっと・・・
 さちちゃん?って言ったかな。
 なんか好きなの買ってやる」




「えっ・・・いいですよぉ!」




「遠慮はいらねーから、
 買いな」




「親父?・・・紗茅!」




きょとんとした顔で那抖が立っていた。




「二人で何やってんだ?」



「ほら、好きな物買え・・・」




ぶっきらぼうに那抖のパパがそう言い、那抖に札を数枚渡し歩いて行った。




「あっあたしはいいよ。
 ママの前で食べにくいし・・・」




「あっそーか・・・
 じゃあ、俺なんか買って
 おくから親父の病室来いよ」




「うん、サンキュー♪
 でも・・・
 いいとこだったのになぁ・・・」




「え?何が?」




「なんでもないよー」




「おまっ!親父好き?」




「かーもねー」




「えぇ〜!」




「んじゃあ、また後でね♪」




あたしは意味深に笑いながら手を振った。
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