折れない心
ママとしばらく話しをして、那抖のパパがいる病室へ向かった。




「んっと〜305、305と・・・
     あっここだ!」



入口のドアは開いたままだった。




「おぉ!来たか!」




那抖のパパが、那抖と同じように微笑んで迎えてくれた。




「まぁこっち来て座りな。
   おいっ那抖!椅子!」



ほい、ほいと言いながら那抖が私に椅子を用意してくれた。




「お邪魔しま〜す。」




「そっか、最近あんまり
 いねーと思ったらそうか・・・」




那抖のパパが意味ありげにニヤリとして那抖を見た。



「うっせーなぁ。
 紗茅、なんか食うか?」



「あっうん、ありがと。」



「那抖が世話になってんな。
 こいつ何にも言わねえから
     わかんなくてな。」




「おじさん?お酒やめてね?」




「え・・・?」




びっくりした顔をして、那抖とおじさんが同時にあたしを見た。




「おじさんには
 死んでほしくないの。
   もう誰にも・・・・・・」




自分では泣くつもりなんかこれっぽっちもなかったのに、涙が溢れた。




どうしていつも那抖や名雪の前では泣いちゃうんだろう。




おじさんが目を赤くして口を一文字にして何回もうなづいた。




「紗茅・・・
 おまえ腹が減ってんだろ。
 ほら食え。あーん♪」

那抖も泣きそうになるのを我慢してそう明るく振る舞った。




「もう・・・那抖のバカ。」

あたしは、那抖が口に放り込んでくれたチョコを食べながら涙を拭った。




そのチョコは、ちょっぴり甘くて、ちょっぴりしょっぱかった。
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