折れない心
あたしはコンビニに戻り、すぐ裏に住む店長に知らせ、警察に連絡してもらった。




心配でたまらなく、コンビニの前で那抖が戻るのをずっと待っていた。




「さっちゃん!
 怪我はなかったか?」




店長が慌てて走ってきた。



「大丈夫です。あっ!あの人が
  捕まえてくれました!」




「おらっ!さっさと歩け!」




那抖が男の子を、後ろ手に取り歩かせながら戻ってきた。




あまりにも人だかりができてきたので、とりあえずコンビニの事務所へ連れて行った。




「ありがとうございます!
 最近この手の万引きが多くて
 困ってたんですよ。
      あの、お名前は?」




「風岡那抖です!」




「う゛っ!那抖ぅ、
  こういう場合はぁ、
 言わないもんでしょぉ」




那抖の耳元で小さな声で囁いた。




「ん?そうなのか・・・?つーか
 おまえ追いかけてどうする
    つもりだったんだよ」




「捕まえる・・・つもり?」




「ぶぁっか!
  ―――危ねぇっつーの!!」

那抖が恐い顔をして真剣に怒った。




「おまえが男に敵うかよ!」




「それもそうだよね・・・なんか
  とっさに追いかけてた・・・」




「さっちゃん、これから追いかけ
 なくていいからね。
 こんなことで
 死んだ人だっているんだよ」

店長が悲しそうな顔をして言った。




「そうなんだ・・・」




なんだか考えると背筋がぞっとした。




「ねぇ、那抖?なんで・・・」




「ん・・・?」




「ううん・・・なんでもない」




「おまえは。いつもそう!」

優しく微笑みながら、あたしの頭をポンポンッとした。




ちょっぴり期待しちゃったんだ。




いつもあたしのことを見てくれてるのかなって。




きっと偶然だよね・・・
< 90 / 299 >

この作品をシェア

pagetop