錯乱(好色一代女)
私はこの時、この人の愛の深さを知った。

心から感謝した…。

今思うと若女将と私は人には理解し難い深いところで結ばれていたのだと思う。


そして夜遅く私の元へやって来た若女将は私に汽車の切符を握らせた

『始発のだよ。終点まで買ったから好きなとこで降りたらいい。必ず手紙書くんだ。いいね?』

そう言ってぎゅっと手を握った。


私は頷いても言葉が出ずに深い一礼をするのがやっとだった…。



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