窓に影2
初チューのことなんてどうでもいい。
問題は昨日のチューなのだ。
とりあえず私に気持ちはないわけだし、わた兄のお戯れということで処理してあるけど、今後も気をつけなければならないことに間違いはない。
わた兄をカッコイイと思う心があるだけに、流されないように意識をしっかり持とう。
「歩の兄貴として、弟の彼女に一つ教えておいてやるよ」
「何を?」
「兄弟事情」
寝転んで天井を向いたまま、わた兄は話題を変えた。
「あいつ、ああ見えてコンプレックスのかたまりだぞ」
コンプレックス?
歩が何にコンプレックスを抱いていると言うの?
「そんな風には見えないけど」
そう言うとわた兄は馬鹿にしたようにフンと笑った。
彼女のくせに、何もわかってないと言われたような気がした。
「虚勢張ってんだろ。恵里の前では、特に」
「何に対してのコンプレックスよ?」
「俺」
起き上がったわた兄は、自信満々に微笑んでいた。