窓に影2

「どうしてそんなに固執するの……?」

 結果は何度も提示しているのに、平和的な解決を望まないわた兄。

 その先に想像できた歩の心理を思うと、勝手に涙が出てきた。

 そんな私を見てわた兄が手を差し伸べてきたが、精一杯の反抗心でその手を払いのけた。

 参った、とでもいうようなため息をもらした彼は、

「恵里の涙に免じて、今日は帰るよ」

 そう言って立ち上がる。

「俺がしつこいのはね、恵里が好きだからだよ。諦めたくないだけ」

 という言葉を残して部屋を出ていった。

 歩が帰る時間まで、後少し。

 涙を止めて、ケーキの空き皿を片づけて、何もなかったふりをしなければ。

 バタバタと片付けをして、彼を迎える態勢を整える。

 歩が来たのはわた兄が帰った20分後だった。

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