窓に影2

 その瞬間、ツーンと頭に戦慄が走った。

 こんなゲームなんかより、よっぽど脳ミソが回転したんだと思う。

 心より先に、体が反応した。

 胸が痛くなった。

 だって、この香り、女物の香水だから。

 しかも、私のものじゃない。

 そう例えば、うちのクラスなら木下ほのかちゃんが使っているやつ。

「えっと、インテグラルアルファベータカッコエックス三乗……」

 意味不明な数学用語を呟いている歩の邪魔にならないように、騒ぎ立てなかったのは彼女として上出来だ。

 私は黙ってベッドから降りて、DS片手に匂いの発生源を捜索。

 香りから生まれた疑惑に、ドキドキしてる。

 歩、まさか浮気なんて……。

 自分との前科があるだけに、信じたいけど、疑ってしまう。

 受験のストレスで、なんてそれっぽい言い訳だってあるし。

 出来るだけ静かにクンクン嗅ぎ回った。

「何やってんの?」

 ビクッ。

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