窓に影2

 訝しげな顔をしてこちらを振り向く歩。

「ちょっと探し物」

「何探してんの?」

「大したものじゃないから、勉強の続きやりなよ」

 私のことだから本当に大したものではないと判断したのだろう。

 素直にペンを握り直した。

 香りがしたのは本当に一瞬だ。

 きっと明日には消えてしまう。

 微かではあったが、あんなピンポイントな香り、気のせいではないはず。

 香りが付いたとすれば……学校だ。

 学校しかない。

 ハンガーに掛けてある歩の制服のパンツに近づくと、またふわっと香りがした。

 しかし、どうやら発生源はここじゃない。

 だとすれば……シャツ?

 その下に脱ぎ捨てられているシャツを手に取る。

 ああ、正解だ。

 微かだが、今までよりはっきりと香りがしていた。

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