窓に影2

 匂いはどうやら背中部分に付いているようだ。

 他に付いてるところは……

「お前変態かよ」

 ビクッ

 シャツをクンクンしているところを、歩に見られてしまった。

「そういう趣味があったの? 知らなかった」

 確かに変態呼ばわりされてもおかしくないが、生憎そういう趣味はない。

 歩のにやけ顔がしゃくに障る。

「趣味じゃないし」

「じゃあどうして嗅いでんだよ。気持ち悪いな」

 あんたの浮気調査よ!

 とは言わない。

 まだ疑惑だし。

 ここで騒いだら相手の思うつぼな気がする。

 かといって、気持ち悪いはムカつくな。

 女の影をにおわせておいて。

「あたし、帰る」

「は?」

「いいから、もう帰る」

 そう言って立ち上がると、歩が椅子を降りて抱きついてきた。

< 113 / 232 >

この作品をシェア

pagetop