窓に影2
「嗅ぐなら直接嗅げば?」
胸にぎゅっと押しつけられ、不覚にもキュンとして背中に腕を回した。
ん? ちょっと待て。
背中に……腕。
背中に、手首。
もしこうやって付いたのだとしたら……?
腹が立って唇を寄せてきた歩の額にデコピンをかました。
「いってーな。何怒ってんだよ」
「自分の胸……いや、背中に聞けば?」
「背中?」
首を出来るだけ捻って背中を見ようとする歩を一瞥し、部屋を出た。
気付いていないのか、わざとなのか……。
どちらにしろ、ヘコむ。
自分の部屋に戻り、窓から歩の部屋を覗く。
左側ではなく、右端に影。
まだ背中を見ようとでもしているのだろうか。
「バカ歩」
ポケットから髪の毛を取り出してみた。
痛みのない、キレイな黒髪。
「あっ!」