窓に影2

 歩が信用を失ってる隙にってことは、わた兄も気付いてるってことだ。

「わた兄には落とし込まれないもん」

「歩から女のにおいがしても?」

「……うん」

 ぶり返さないでよ。

 不安になるじゃない。

 って、そういう作戦か。

「そんなに歩が好き?」

「うん」

 ははっと笑ったわた兄は、いつもよりちょっと真剣な声で言った。

「南高、行くぞ」

「え……?」

 車は進む。

 少しだけ混雑している国道をまっすぐに。

 南高に行って何をしようというのだろう。

 卒業生のわた兄はいいとして、現役北高生の私は制服のまま進入する勇気なんてない。

「南高で何するの?」

「北高でしたのと同じこと」

「待ち伏せ?」

「そういうこと」

 意図を掴めない私に、わた兄は細かく説明をしてくれた。

< 118 / 232 >

この作品をシェア

pagetop