窓に影2
窓はすべて5分の1くらいずつ開けられた。
声が聞き取りやすいように。
かつ、ナビの画面の光で私の存在がばれないようにエンジンはオフ。
私は後部座席に寝転がった。
わた兄が車を降りて、車に寄りかかりながら歩を待つ。
ドク ドク ドク
聞こえるのは自分の鼓動だけ。
しばらくそうしていると、周りが賑やかになってきた。
三年生が下校を始めたのだろう。
コンコン
わた兄の合図。
歩が現れたのだ。
私はおそるおそる起き上がって、出来るだけ身を隠しながら窓を覗く。
どこ?
生徒がたくさんいすぎてわかんないよ。
「歩」
わた兄が低い声を発した。
それに気付いた生徒がこちらに寄ってくる。
その瞬間、暑い車内で私は完全に凍り付いた。
呼びかけに応じたその生徒が……女と二人で歩いてきたから。