窓に影2
歩と一緒に歩いていたのは、紛れもなく西山家から出てきた女。
黒くて長い髪の毛。
おそらく犯人。
私は絶望の淵に立たされた気分で再び後部座席に身を隠した。
「なんだ、来るなら連絡くらいしろよ」
「悪い。まさかよそでデートの予定があるとは知らなくてね」
「そんなんじゃねーよ」
「あっそ。じゃあ、そちらは?」
「兄貴には関係ない」
「ま、別に良いけど」
「恵里に変なこと言うなよ」
「どうして?」
「余計な心配はかけたくない」
「余計ってどういう意味?」
「それも兄貴には関係ない」
「冷たい弟だな。お前の方が少しは恵里を心配したらどうだよ」
「は? どういう意味?」
「さあね。ただ、女モノの香水付けて帰る趣味は兄貴としてもいただけないな」