窓に影2
「バカじゃねーの? そんな趣味ないけど」
「バカはお前だ。本当に気付いてなかったのかよ」
「は?」
「昨日、帰宅したお前から恵里とは違う匂いがしたぞ。……ほう、心当たりがあるらしいな」
「それであいつ、昨日あんなこと……」
「お前が誰と遊ぼうが俺には関係ないけど、せめて証拠くらい消して帰れば?」
「……とにかく、俺と恵里の問題だ。兄貴が口を出すなよ」
「口は出さないよ。歩が女と歩いてたとも……言わないし」
「だったらさっさと帰れ」
「そうさせてもらうよ」
車が揺れて、わた兄が運転席に乗り込んだ。
エンジンがかけられ、エアコンの涼しい風が流れ込んでくる。
窓が開けられ、兄弟の会話は続く。
「あーあ、せっかく楽しくドライブしようと思ったのに」
「兄貴と二人なんてお断り」
「誰が二人って言った? 三人だよ」
「え?」