窓に影2
ここで車は走り出した。
涙に濡れた目の周りが、エアコンに冷やされてやけに冷たい。
「これからどうしますか? お姫様」
「……遠くに行きたい」
「かしこまりました」
泣き虫な私を乗せて、車は走る。
歩と離れたくて仕方がなかった。
裏切られた確証を得たわけではない。
だけど、実際に女と二人で歩いていたのを見てしまった。
香水の匂いが移るほど、触れ合ったことに間違いはない。
ただの学友なら、何もないなら、そう言えばいい。
歩は隠そうとしてた。
何かあるってことだ。
ポケットの携帯が震えている。
ディスプレイに映る歩の名前が滲む。
私はそっと電源を落とし、再びポケットに収めた。
「わた兄」
「んー?」