窓に影2
運転席からいつもの軽い返事がして、私は少し安心してしまった。
「あたし、バカかも」
「なんで?」
「今ならわた兄に抱かれてもいいって思った」
この感じ、覚えがある。
歩に選んでもらえなくて、別の男と付き合った時の感覚と似ている。
思えば歩が家庭教師になった時から、私の心を痛めつけるのはいつも歩だった。
痛いよ。
痛くて、苦しい。
誰か助けて。
わた兄は無言のまま車を走らせる。
私もそれ以上何も言わないことにした。
ただ後部座席に寝転がったまま、ボロボロと涙を流す。
指で涙をすくうと、スモークの貼られた窓から星が見えた。