窓に影2
9・氷のように
車で走ること約一時間。
来た道を見ていたわけではないからここがどこなんだかよくわからないが、広い駐車場に落ち着いた。
私は後部座席でわた兄に抱きしめられながら、一通りグスグス泣き終わったところ。
「わた兄」
「なに?」
「どうしてここなの?」
わた兄が車を停めたのは、田舎のパチンコ屋の駐車場だった。
「広いしタダだし?」
「あっそ」
傷心した私でも、パチンコ屋の派手なネオンを見てるとだんだんアホらしくなって、涙は思ったより早く止まったのだった。
わた兄から家に電話してもらって、帰りは遅くなると伝えてある。
だから思う存分に泣けって言われたけど……パチンコ屋かよ、みたいな妙な冷め方をしてしまった。