窓に影2

 わた兄は苦笑いをして、

「バーカ。弟に傷心中の女なんかにタたねえよ」

 と頭を小突いてきた。

「タたないなんて、失礼ね」

「それに、そんなに泣いてる恵里を見たらもう口説けない」

「なんで?」

「だって俺、絶対浮気するし」

「絶対とか、最低」

 いつか歩にも言ってやりたい。

 思いっきり文句言ってやりたい。

 ああ、思い出したらまた泣けてきた……。

「あー、よしよし。もう泣くなよ」

 わた兄はティッシュをまた一枚箱から抜き取り、メイクの上からポンポンと涙を拭ってくれた。

「あ、まつげ取れた」

 その一言でまた冷めて涙が止まる。

「いいよ、貼り直すし」

 バカみたい。

 私ばっかり泣いてさ。

 歩だって一度でも私のために泣いてみろってのよ。

 バカやろう。

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