窓に影2

 階段を下りて玄関に着くと、母が出てきて甲高い声を上げた。

 お気に入りの歩を見送りに来たのだろう。

「ごめんねぇ。恵里が長々と待たせちゃって」

 耳にビリビリと響く。

 歩は母に作り物の爽やかスマイルを向けた。

 いつもながら、役者だと思う。

「待つつもりで押し掛けたんだし、気にしないでよ」

 その爽やかスマイルが、気に入らない。

 いっぺんでも私にそんな顔見せてみろや、こんちくしょうめ。

「別に約束とかしてないし」

 ボソッとぼやくと、母からムチのように言葉が返ってきた。

「だからって寝過ぎよ、あんたは。電話よって何度起こしても起きないんだから」

 言い返せない。

 母は私が夜から寝ていると思っているだろうし。

 それにしても……

「電話?」

 自宅の方に私宛の電話なんて、珍しいな。


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