窓に影2

「というわけで、納得してくれた?」

 優しく笑う歩の顔を見て、こくりと頷いた。

 凍り付いていた心が安堵でトロトロと溶け出して、少し気を抜くと溶けた雫が目から出てしまいそう。

 しかし、彼女のほうはまだ言いたいことがあるらしかった。

「私、まだ諦めないから」

 下唇を噛み締め、さっきまで強気だった顔は、眉がハの字に傾いている。

「朝子、もういい加減……」

「どうしてこの子なの? その前の彼女を見たときは諦めようって思ったけど、やっぱりこの子には負ける気がしない」

 前の彼女のことも知ってるんだ。

 確かに私の前の彼女を見れば、怖気づくのも無理はない。

「どうしてそう思うんだよ」

「だって、レベルが違いすぎるもの」

「何のレベル? 俺の気持ちは学力に比例するとでも思ってんの?」

 ぴしゃりとはね付ける歩は、冷たい顔をしていた。

 この子、本当に歩のことが好きなんだろうな。

 だから自分よりバカそうな私が彼女だなんて認めたくないんだ。

 その気持ち、わかるよ。

 私だって、自分よりダサい女と付き合ってたら嫌だもん。

< 142 / 232 >

この作品をシェア

pagetop