窓に影2
「恵里ちゃん? 谷村だけど。えっと、実は頼みがあってさ」
「頼み?」
谷村君は少しまごつきながら、
「一回だけデートしてくれないかな?」
と申し入れてきた。
彼とのことはもう解決したものだと思っていた私は、想定外の申請に肝を抜かれた。
「だからあたしには彼氏がいるって……」
「お願い! その一回で諦めるし、デートしてくれるまでは諦めないから」
これは面倒なことになった。
歩に相談するべきか?
いや、今の彼には私の悩みなんかより意味不明な公式を詰め込んだほうがいい。
ここは自分の力でビシッと解決しなければ。
「あたしの気持ちは変わらないから。ごめんね」
そう言って、電話を一方的に切った。
歩の部屋に戻ると、彼は勉強に区切りがついたのか、ベッドに突っ伏している。
受験勉強というのは体力を使うらしい。