窓に影2
その質問に答えたのは歩だった。
「ああ、俺。携帯にかけても出ないから」
母はまた「ごめんねぇ」と甲高い声を上げた。
「じゃ、おばさん。恵里をお借りします」
「どうぞどうぞ」
「遅くならないようにするよ」
「歩君が一緒なら遅くなっても安心よ」
すっかり歩を信用している母の言葉に、歩は靴を履きながら苦笑いを浮かべた。
「はは、俺が一番危険だと思うけどね」
なっ……何を言ってんだ、こいつは。
そんなこと言ったら……。
「え? どういう意味? あなたたち、そういう関係なの?」
ほら、バレちゃうじゃない。
彼は営業スマイルのまま、
「さぁ」
と濁した。
驚いている母の顔は、ちょっと嬉しそう。
幼馴染である歩と「そういう関係」だなんて、母に知られるのは恥ずかしかった。