窓に影2
11・迷いの代償
帰宅するなり私は、晩ご飯を無理に腹に入れて歩の部屋へ駆け込んだ。
歩は血相を変えた私を見て、
「お前顔ヤバいよ」
と笑った。
それに何となくホッ。
「うるさいな」
そう言って歩のベッドに潜り込んだ。
歩の匂いに包まれて、溶けてしまいたかった。
「歩、来て」
「俺今忙しいの」
「いいから、来て」
駄々を捏ねる私に呆れ顔で応えてくれる。
そんな歩にガッシリとしがみついた。
「どうしたの? 何かあった?」
答えられるわけがない。
首を横に振り、歩の触感と体温と匂いで気持ちを確認する。
だけど、全く心は晴れなかった。