窓に影2
「そういえば、西山から何か言ってきた?」
「え?」
「おめでとうとか、おめでとうとか、愛してるとか」
「あはは、あるわけないじゃん。もう別れちゃったんだし」
不服な顔をしながら、母作のケーキを頬張った聡美。
紅茶をグビグビ飲み干して、一言。
「あんなやつ、地味山に降格よ!」
なんだかおかしくなって、私は大爆笑。
そういえば地味山という裏のあだ名があったんだった。
今年の春頃までそう呼ばれていたのに、もう懐かしく感じる。
夕方、聡美は
「夕飯食べていかない?」
という母の誘いを
「私もいい加減受験勉強しなきゃいけないから」
と断って、うちを去って行った。
彼女を見送り、母と夕食を食べて部屋に戻り、今日もカーテンを少しだけめくってみた。
明かりはついているのに、左下に影はなかった。