窓に影2
「ごめん。俺、恵里の話何にも聞かずに一方的に別れ切り出しちまった」
「もういいよ。あたしだって不甲斐なかったんだから」
「俺はまだ良くない」
「え……?」
電話越しに、カラカラと窓の開く音がした。
私も誘われるように窓へと移動する。
窓を開けると、一ヶ月ぶりに歩の顔が見えた。
手が届きそうで、わずかに遠い。
手を伸ばしたって晩秋の冷たい風を切るだけ。
この2~3メートルが、苦しいほどに憎い。
「恵里」
そんな切ない声で名前を呼ばないで。
「ほんとにごめん」
「もういいってば」
メガネをかけていたって、私には彼がどんな顔をしているかわかる。
今更そんな顔見たくないよ。
「冷えるよ。窓閉めて勉強の続きやりなって」
「俺、最近恵里が気になりすぎて勉強に手ぇ付かないんだよ」