窓に影2

 数秒の静寂が流れる。

 空気のピーンとした音と自分の心音だけが耳に響いた。

「すぐ行く」

 電話はそこで切れた。

 ジャスト0時。

 私は部屋を出て、玄関に向かう。

 両親がまだ起きていようが、関係なかった。

 母の買い物サンダルを足に引っ掛け外に出ると、ちょうど歩も出てきていた。

「恵里」

 彼に向かって走り出す。

 そして、ちょうど家と家の間。

 ピリッと張り詰める空気の中、私は歩の胸に飛び込んだ。

「歩……」

 顔に、胸に、腕に、背中に。

 彼の体温が染み込んでいく。

 彼の匂いも、体中を巡る。

 ああ、私、まだこんなに歩のこと好きだったんだな。

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