窓に影2
ドアの前で立ちすくむ。
これまでは「入るよー」と言いながら開けるのが常だったが、今更それも出来なかった。
一旦深呼吸をして、コンコンと2回ノックをしてみた。
「なにー?」
ドアの奥から聞こえた声に、体が火照る。
ドクドクと血が巡り、足の先まで神経が研ぎ澄まされた。
「あたし」
そう言うと、奥でガタガタと物音がした。
そして……
バン!
勢い良く扉が開き、メガネをかけた歩と二ヶ月ぶりの対面。
「恵里」
歩の体がゆっくりこちらに向かってきたけど、それを遮るように手荷物を差し出した。
「これ、差し入れ。渡したら帰ろうと思ってたの」
箱を受け取ると、そこから染み出る香りに、歩も中身が何かを察したらしい。
私はドアの外でその様子を眺めていた。
この部屋に入ってしまうと、我慢していることが全て無駄になる気がしたから。
この言葉を告げたら、すぐに帰るんだ。
「明日、センター試験なんでしょ。頑張ってね」