窓に影2

 その時。

 ガチャッ――

「入るわよー」

 カナママの声に、私たちはパッと離れた。

 あと少しだったのに……。

「紅茶入ったわよー」

「ありがと、カナママ」

 カチャカチャと紅茶をテーブルに置き、小皿とフォークを並べてくれた。

 私は更に持ってきたガトーショコラを一切れずつ乗せ、

「あとはおじさんと食べて」

 といって箱ごと彼女に手渡した。

 少し不機嫌な顔をする歩は、むすっとしたまま黙っている。

 そんな彼を見て、カナママがいやらしい顔をしてフッと笑った。

「邪魔して悪かったわね」

 歩の顔が少し赤らむ。

 カナママはクスクス笑いながら去っていった。

 パタン――

 再び二人の空間になる……が、すっかりキスのタイミングを逃した私たちは、しばらく照れながらただ座っていた。

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