窓に影2
「とりあえず、食べよう」
先に動き出したのは歩。
私の向かいに座ってフォークを握った。
ピリッと緊張が走る。
自信がないわけではないし、自分でも食べて味を確認した。
だけど、この瞬間は不安になる。
美味しいって、言ってくれるかな……?
歩はフォークを一旦縦に入れ、食べやすい大きさに切り分ける。
それをフォークに刺し、持ち上げる。
口元に持ってきて……口に入れず一旦小皿に下ろした。
「食べないの?」
不安になって問いかけると、歩はフォークのガトーショコラを眺めていた。
眉をハの字に下げて。
「いや、食べるんだけど……なんか、嬉しくて」
「変なこと言わないでよ」
「だってさ、クリスマスと正月とバレンタインが一気に来た気がして」
「無しだって言ったじゃない。これはただの差し入れ」
「何だっていいんだよ」