窓に影2
「やだやだ、行かないでよ」
「あははは」
笑いながら、歩は遠くへと行ってしまう。
私は呼び止めようと必死だった。
「歩ー!」
「なに?」
一際はっきりした声に、私はパチッと目を覚ました。
目の前には歩。
クスクス肩を揺らして笑っている。
「え……? あれ?」
「やっと起きた」
状況がよく飲み込めない。
何が夢で何が現実なのか、しばらく混乱した。
起き上がって時計を見ると、昼の2時を過ぎていた。
携帯には歩からの着信が何件も入っている。
「うわ、最悪……」
こんな大事な時にぐっすり眠ってたなんて。
「おそよう」
歩がベッドに上がってきて、スプリングがググッと揺れる。
「ごめん……すっかり眠ってた」
「ほんと、電話にも出ないし、シカトされてんのかと思った」
「シカトなんてしないよ! 歩の夢見てたし」
切ない夢だったけれど。