窓に影2

「今度は目ぇ瞑って」

「やだ。なんか怖い」

「目ぇ瞑るなら前向いて歩かせるから」

 それなら後ろ向きより安心だと思い、言われたまま目を閉じた。

「いいって言うまで絶対に開けるなよ」

「開けたら?」

「目ぇ潰す」

「意味わかんないし」

 ケラケラ笑いながら、歩は私の体を再び回転させる。

 そして右手が温かいものに包まれた。

 歩の手。

 引かれるまま足を進める。

 風が吹く度にサラサラと木々や草の音が聞こえ、その中に川のせせらぎのような音が小さく聞こえるのに気付いた。

 この辺りに川なんてないはずなのに……。

 せせらぎはだんだん近くで聞こえるようになり、私たちは足を止めた。

「もういい?」

「まだ」

 最後の仕上げとばかりに、歩は私を90度だけ回転させる。

「はい、いいよ」

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