窓に影2
生態系という言葉くらい私も知っている。
「水があって、植物があって、動物がいる。川の中に、メダカがいるんだ。そこに蛍も住みついたってわけ。これ、一応うちの高校の名物」
蛍の光は川の水に反射して、本当は一体何匹いるのか見分けるのが難しい。
そこに広がる光景が幻想的で、歩の説明にコメントすることもできなかった。
やっと一旦目を離して歩の隣に腰掛けると、歩は優しい顔をして微笑んでいた。
「恵里ならもっとはしゃぐと思ってたんだけど、期待外れ?」
「違うよ。あんまりキレイだから、何にも言えなくなっただけ」
「それなら良かった」
蛍はただゆっくりと光を放つ。
自分を主張しながら私の心を洗ってくれているよう。
サラサラと流れる小さな川が、BGMとしてぴったりマッチしている。
「ねえ、歩」
「何だよ」
「どうしてここに連れてきてくれたの?」
言って、歩の肩に寄りかかった。
触れている場所が、私の鼓動に合わせてドクン、ドクンと波打っている。