窓に影2
「……わかったよ」
この一言を最後に、電話は切れた。
怒らせちゃった……。
なま暖かい涙が頬をつたい、それをざっくり手で拭う。
「恵里……」
聡美が心配そうに声をかけてきたから、私は無理に笑顔を見せた。
「聡美、カラオケ行こう」
こうしてわざと帰りを遅くするのはやっぱり反抗心。
それと、寂しさや不安を吹き飛ばすためでもあった。
歩が勉強で忙しいのは、受験が終わるまで変わらないこと。
いや、入試が近くなるともっとハードになるだろう。
寂しいけど、慣れなきゃいけないんだ。
慣れることができれば、素直な気持ちが
「寂しい」
じゃなくて
「頑張れ」
だけになる。
そういう状態を目指そうと思った。