窓に影2

「……わかったよ」

 この一言を最後に、電話は切れた。

 怒らせちゃった……。

 なま暖かい涙が頬をつたい、それをざっくり手で拭う。

「恵里……」

 聡美が心配そうに声をかけてきたから、私は無理に笑顔を見せた。

「聡美、カラオケ行こう」

 こうしてわざと帰りを遅くするのはやっぱり反抗心。

 それと、寂しさや不安を吹き飛ばすためでもあった。



 歩が勉強で忙しいのは、受験が終わるまで変わらないこと。

 いや、入試が近くなるともっとハードになるだろう。

 寂しいけど、慣れなきゃいけないんだ。

 慣れることができれば、素直な気持ちが

「寂しい」

 じゃなくて

「頑張れ」

 だけになる。



 そういう状態を目指そうと思った。







< 43 / 232 >

この作品をシェア

pagetop