窓に影2
壁のほうを向いて眠っている歩は、呼吸に合わせて背中が微かに動いていた。
私のこと、待っててくれたのかな?
いつからいたんだろう。
机に置いてある見慣れない本は、歩の勉強道具らしい。
背表紙に「ジーニアス英和辞典」と書かれていた。
ベッドの脇に荷物を置き、歩の寝顔を堪能しようと上から覗いてみた。
明かりの位置の関係からか、私の影がちょうど歩の顔にかかって暗くなる。
その時、パチッと歩の目が開いた。
「あ」
思わず声を漏らして、一歩後退。
歩は起き上がって、あくびをしながら目を擦る。
「やっと帰ってきたの?」
「……うん」
どうしよう。
気まずい。
ちょっとケンカらしいことしたばっかりだし。
きっと私を怒るために来たんだ。